タイ

南タイ・トラン県タリボン島、バトプテ村の場合

ジュゴンは他の海棲哺乳類とくらべて岸に近い海域に棲息しており、国際的に人間活動による個体数減少が心配されています。私たちは、ジュゴンと人がどうすればうまくいくか、地域ごとにぴったりの方法を探るため、タイでもっともジュゴンがたくさん棲息している(約150頭)タリボン島で調査を行っています。上の写真は、タリボン島の漁村・バトプテ村の波止場から船で5分ほどの地点です。灰色のジュゴンの背中が小さく写っていることがわかりますか? はじめてこの島を訪れたとき、村にこれほど近いところを日常的にジュゴンが往き来していることに、とてもおどろきました。

これまで、のべ約3ヶ月間、村に実際にくらして、人びとの生活を観察しながら漁師さんを中心に村の人たちにインタビューをしました。漁業者は毎日、潮の満ち引きや風向き・強さ、エンジンの馬力、とれる魚介の市場価格、ガソリン代といったいろいろな条件を考えて最適な出漁をします。その実態を明らかにするために、まずは漁業者にお願いして、出港から帰港までの船の軌跡を記録できるGPSロガーという装置をつけてもらったりWeb操業日誌に協力してもらいました。一方、近年タリボン島を訪れる外国人観光客が増えているのですが、それにともなってジュゴン観察ツアーの人気も高まっています。往来するツアー船も増加傾向にありますが、まだツアー船の公的なルールはなく、時にはジュゴンを追い回す船が目撃されています。島の人びとのジュゴン保全への関心は高く、2017年10月に新しいジュゴン保護区がつくられました。いったんルールが決まったわけですが、ジュゴンを確実に保全し、かつ、タリボン島の人びとのくらしに負担がなるべくかからないようにするために、関係者間で調整が続けられています。

今はまだバトプテ村の人びとのくらしの表層がわかってきたかな、という段階です。時間がかかりますが、村の人びととジュゴンの関係をひとつひとつ紐解き、わかったことをジュゴン保全に役立ててもらえるように村の人に情報提供したいと考えています。

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