ソムタムの会

タイ

私のホームステイ先の奥さん、Aさんは、子育てに家事に仕事にと日々大変忙しく過ごしている。そんな彼女の息抜きをひとつ教えてもらった。それはご近所の奥さんたちとおしゃべりしながらソムタムを作り、一緒に食べることなのだという。

ソムタムというのはタイの伝統的なサラダだ。ソム(ส้ม)は酸っぱい、タム(ตำ)は叩く、という意味で、臼(クロック:ครก)に材料を入れて杵(サーク:สาก)で叩き潰すようにして作る。もともとはタイ北部のイサーン地方の料理だが、現在はタイ全土に広がっており、南タイのタリボン島でも普通に食卓にのぼる。

2018年9月のある昼下がり、Aさんが「ソムタムでも作って食べましょうか」と思いついて、ご近所に声をかけに行った。Aさんの家の隣家の庭にあるテーブルに、材料と道具を運ぶ。いつもこの家の奥さんと裏の家の奥さんと、3人で作るそうだ。

材料を切る(2018/9/30 撮影)

材料は、青いパパイヤの実、トマト、小さなナス、ライム(マナオ:มะนาว)、唐辛子、ニンニク、炒ったピーナッツ、味の素、パームシュガー、ナンプラーだ。

青いパパイヤの実はささがき、トマト、ナスは櫛形切りに、ライムは絞りやすい形に切る。以下は道具と材料の写真である。中央下はパームシュガー、右下はパパイヤをささがきしているところである。

作り方は、まず唐辛子やニンニクを臼に入れて杵で叩き潰し、マナオの果汁などの調味料と混ぜ合わせながらさらに潰していく。

臼と杵で潰しているところ(2018/9/30 撮影)

おしゃべりをしながら、でもテキパキと作っていく。トン・トン・トンという杵の音が庭に響く。

調味料がよく混ざったら、そこにささがきしたパパイヤを投入し、潰さずに押しつけるようにして味を染み込ませる。そして、ナスやトマトを加えて調味料とよく混ぜ合わせる。

パパイヤ等を入れて混ぜ合わせているところ(2018/9/30 撮影)
ソムタム作りの傍らでくつろぐ猫(2018/9/30 撮影)

作り始めて30~40分ほどで完成した。テーブルを囲み、できたてのソムタムを食べながらおしゃべりの続きを楽しむ。

できあがったソムタム(2018/9/30 撮影)

味はまず酸味がくるが、パームシュガーも入っているのでほんのり甘い。同時に唐辛子がピリッと効いている。そして、パパイヤのシャキシャキした歯ごたえやナッツのカリッとした食感が楽しい。食欲をそそる味だ。本当は唐辛子をもっと入れるそうなのだが、私も食べるということで今回は手加減してくれた。

毎日顔を合わせて親しく言葉を交わす3人だが、それぞれに忙しい。たまにこうやって、3人一緒に自分たちのためにソムタムを作っておしゃべりすることは、楽しい息抜きなのだそうだ。火を使わず、切って突いて混ぜ合わせるだけのソムタムは、難しすぎず、また、あっという間にできあがってしまうわけでもない。ソムタムは複数人で作る場合、ちょうどいい負荷で作れて、失敗しにくく、美味しいという、ストレス解消や気分転換に格好のメニューなのだろう。ご近所の繋がりの強いタリボン島社会だが、気軽にご近所の人と共に料理をして共に食事を楽しむという習慣のあることは新鮮に映った。

青空の下、楽しいひと時だった。

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