ゲデ(魚突き漁)と月齢

タイ

タリボン島のホームステイ先の裏にはバイク整備屋がある。或る日、そこの息子さん夫婦が「「ゲデ」に行く予定があるんだけれど、あなたも来る?」と声をかけてくれた。ゲデ(แกแดะ)はタリボン島では何種類かの魚を指す言葉なのだが、つまりこのお誘いは「魚突き漁に行きますか?」という意味だ。主に獲れるのがゲデなので、「魚突き」と言わないで「ゲデ」という表現になるらしい。2人は仕事終わりに自宅のおかず用の魚を突きに行くとのこと。いったいどんな漁なのか気になる。「ぜひとも!」と答えて連れて行ってもらうことにした。

ゲデに適しているのは「月齢3、4、5の日」だそうだ。それ以外の日には行かない。タイの月齢の表し方は日本と少し異なっていて、私は理解するのに手間取った。ここに整理しておこう。まず、新月の翌日から満月までの15日間はクルン(ขึ้น)と呼ばれる。そして、満月の翌日から新月までの14~15日間はレーム(แรม)と呼ばれる。例として、ゲデに連れて行ってもらった2019年9月17日を見てみよう。

2019年9月のカレンダー。日付の下に書いてあるのが月齢(2019/9/15 撮影)

この日はレーム・4・カム(แรม 4 ค่ำ ※カムはレームやクルンのセットとなる語)だ。意味は、満月から4日過ぎた日、ということである。「月齢3、4、5の日」という表現には、クルンの場合もレームの場合も含まれる。この時期の潮の引き具合が、ゲデをするのに適しているのだという。

ゲデは浅瀬を歩きながらおこなう突き漁で、潜水漁ではない。使う道具は長さ約1mの三又のヤスだけだ。これで岩の隙間に潜んでいる魚を突く。

ゲデで使うヤス(2019/9/13 撮影)

では、実際に連れて行ってもらった時の様子を紹介しよう。

■2019/9/17

18時30分頃、バトプテ村からバイクで15分ほど走ったところにある隣り村の漁場に到着。潮が引いて、浜から沖へ約20mの範囲がおおよそ膝下までの水深になっていた。魚を入れる容器を肩から斜めがけし、ヘッドライトをつけ、片手にヤスを持ってざぶざぶと海へ入っていく。海底はごろごろとした岩場で歩きにくい。あたりはあっという間に暗くなった。

漁場。浜からほど近い(2019/9/17 撮影)

最初、息子さんがお手本を見せてくれた。ゆっくりと静かに歩きながら魚を探す。5分もたたないうちに、息子さんが「ほら」と何かを指差した。よく見ると、岩と岩との隙間に魚が隠れていた。息子さんはサッと狙いをつけたのち、勢いよくヤスで魚の腹を突いた。無駄な力が入っておらず、とても簡単そうに見えた。

しかし、それは大間違いだった。私は「せめて1匹は獲りたい!」と必死になって魚を探したのだが、1時間以上探し回っても1匹も獲れなかった。いや、獲る以前の話で、そもそも魚を見つけられない。また、運よく見つけた数匹の魚に関しても、嬉々としてヤスで突いてみたものの、狙いが不十分なのだろう、ことごとく逃げられてしまった。私にはかなり難易度が高かった。

魚を探すことに必死だったので漁の写真はないのだが、ウミヘビと遭遇して思わず撮った1枚がある。それが次の写真なのだが、実はこれは失敗だった。なぜなら、私は危険なことだと知らずにウミヘビにヘッドライトを当ててしまっていたのだ。どうやらウミヘビ類の中には光に向かってくる種もいて、もし噛まれたら毒があるので危ない、ということのようだ。後で、その時近くにいた息子さんをひやひやさせてしまっていたと知り、深く反省した。

ゲデ中に見つけたウミヘビ(2019/9/17 撮影)

20時30分頃、帰宅。その日はバタバタとして漁獲物の計量や写真撮影はできずじまいだった。参考として、翌日もゲデに行った息子さん夫婦に漁獲物を見せてもらったので、ご紹介する。ゲデや、タリボン島でタマー(ตามะ)と呼ばれる魚を中心に、2人で約2kgの漁獲だった。

ゲデの漁獲物の一部(2019/9/18 撮影)

かえすがえすも、自分は1匹も獲れなかったということが残念でならない。できたらホストファミリーにプレゼントしたかった。可能ならばまた再挑戦したい。

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