Jさん夫妻は、魚刺し網漁とカニ刺し網漁を中心におこなう漁業者だ。いつも夫妻で操業しているが、タリボン島では珍しいことではない。Jさん夫妻は漁業だけでなくジュゴン・ウォッチング船の船頭もしていて(観光シーズン)、年間を通して主に海の仕事で生計を立てている。そんな彼らのおこなっている刺し網漁とはいったいどのような漁なのか。お願いして魚刺し網漁に同行させてもらった。今日はその時の様子を紹介したい。
■2019年9月10日
Jさん夫妻に魚刺し網漁に連れて行ってもらう。 集合時間は17時頃。天候は穏やかで、常に微風が吹いている。気持ちのよい夕暮れ時だ。海水面はまだ低いが、じわじわと潮が満ちつつある。自宅から歩いて5分ほどの船着場へと向かう。
Jさん夫妻の使っている魚刺し網は、長さ約500m、高さ3~4mの細長い長方形をしており、網の目合いは4.5cmである。
17時17分、出航。漁場は船着場から南南東方向に約2kmのところ、Nok hatと呼ばれるエリアだ。舵を握るのはJさん夫。彼はこの島の出身ではないが、漁師の家に生まれたという。Jさん妻はバトプテ村出身だが、結婚するまでこのように漁に出ることはなかったとのこと。もう2人で漁業を始めて10年になる。Jさん妻は「漁に行くのは好きよ」と語っていた。さて、Jさん夫が潮の流れを見て、ポイントを決める。17時51分、網を設置する作業が始まった。
網を設置するのに約8分かかる。設置した後は、網の両端につけてある旗付きのブイの様子を見ながら待つ。夕焼けの色が刻々と変化する中、静かな時間が流れる。
やがて約30分ほど経ち、網揚げ作業が始まった。引き揚げるのはJさん夫、魚をはずし網をまとめる作業はJさん妻がおこなう。
この日は別の人の設置したブイが漁網に絡まっており、それをはずす時間も含めて網揚げに約40分かかった。19時11分、網揚げ終了。それから帰途についた。魚は自宅に持ち帰って、庭の大きなテーブルの上で計量する。漁獲量は約5kgで、あまり多くない日だという。とれた魚は、プラー・ラン(ปลาลัง)やプラー ・トー(ปลาทู)という、和名で言うとグルクマ(Rastrelliger kanagurta)系の魚が多かった。ちなみに、プラー というのはタイ語で「魚」を意味する。さて、後日確認したが、売り上げは400bht(約1400円:2020/8/11のレート)だったそうだ。
以上で、9月10日の魚刺し網漁の報告は終わりである。最後にいくつか補足したい。実は、私は翌日もJさん夫妻の魚刺し網漁に同行した。今度は朝、前日と同じく上げ潮時に出航した。潮の満ち引きはだいたい1日に2回あるので、それに合わせて1日2回操業しているようだ。11日の漁獲量は1kg程度で、残念ながら空振りに終わった。Jさん夫妻は淡々としていた。私の同行した漁の漁獲量は2回ともあまり芳しくなかったが、豊漁の際、船上はどのような様子になるのだろうか。また同行させていただけるチャンスがあれば嬉しい。
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