魚かご漁

タイ

かごで作ったしかけをもちいて魚を獲る魚かご漁のことを、サイ・プラー (ไซปลา)と呼ぶ。サイ(ไซ)とは魚を獲るかごを意味していて、プラー(ปลา)は魚を意味する。ある日、私は宿泊していた民宿のオーナーの弟さんであるRさんに、魚かご漁へと連れて行ってもらった。その時のことをご紹介したい。

■2018年1月19日

Rさんのご実家は、村の中心部から少し離れた小さな川の河口にある。9時24分、潮が満ちつつある中、出港。家の前の浜に泊めてあった船を押し出す。船は全長約6mと、タリボン島の一般的な船と比べてかなり小ぶりだ。Rさんの甥っ子も一緒に出かけた。

Rさんの船と甥っ子(2018/1/19 撮影)

魚かごと一口に言っても、狙う魚によって様々な大きさがある。Rさんが使用しているのは小ぶりのかごだ。と言っても、長辺×短辺×高さが約90×60×30(cm)はある。網の目は約3cmだ。

Rさん使用のものと同型の魚かご。黄色矢印で示したダイヤ型に開いたところから魚が入るしかけ(2019/9/10 撮影)

出航して約5分後に、Rさんが事前にしかけておいた魚かごのある場所に到着した。浜から800mほどしか離れていない。魚かごの端のロープにはペットボトルがくくりつけてあって、どこに沈めたかを示す浮きとなっている。ペットボトルをつかみ、ロープを手繰って魚かごを引き上げていく。魚かごには海底に固定するための石の重りがついていて、乾燥している状態でも約15kgはある。海の中で水を吸った魚かごはなおさら重い。このペットボトルには、合計5つのかごが繋がっていた。

引き上げた魚かご(2018/1/19 撮影)

引き上げて中の魚を確認する。あまり市場価値の高い魚は獲れなかったようだ。

魚かご内の漁獲物(2018/1/19 撮影)

Rさんは先ほど引き上げた5つのかごを積んだまま230mほど離れた場所に船を移動し、かごをひとつずつドボン、ドボンと設置していった。入った魚はそのままだった。餌がわりにするのだろうか。さて、船の上は出発時と同じく空っぽになった。またペットボトルの位置を目印に、約130mほど離れた次のポイントへと移動した。出発地点から約1km離れたこのポイントには、9つのかごが設置されていた。またロープを手繰ってひとつずつかごを引き上げていく。すべて引き上げるのに10分弱かかった。今度は、現地でラプー(ละปู)と総称されるハタの仲間であるドックマー(ดอกหมาก)、和名ではキテンハタ(Epinephelus bleekeri)と呼ばれる魚が4匹入っていた。ハタ類はタイでは一般的にはプラー ・ガウ(ปลาเก๋า)と呼ばれていて市場価値の高い魚なので、生け捕りにしてポリタンクに移す。

ポリタンクの中のドックマー(2018/1/19 撮影)

9つのかごも少し離れた地点に再設置し、10時半に帰港。出港から帰港まで、約1時間だった。感覚としては、家の前の畑で野菜を収穫するようなイメージだ。魚かごのメンテナンスなど、他にも作業はあるのだとは思うが、とても手軽な漁であるように思えた。ただし、1日の漁でドックマー4匹というのが、漁獲量として満足のいく量なのかはよくわからなかった。

さて、ドックマーはまだ出荷するにはサイズが小さいので、高値がつくサイズに成長するまで蓄養する。Rさんのご実家の裏には池があり、そこに生簀が組んであった。さっそく獲ってきたドックマーを生簀に移す。

蓄養池。赤色のカゴに、獲ってきた小さなドックマーを移す(2018/1/19 撮影)

街中のレストランでプラー・ガウ料理は比較的高級な部類に入る。姿煮や姿焼きにされることが多く、お皿の上で見栄えのする、ある程度の大きさが高く売れるそうだ。日本でもハタ類は高級魚であることが多く、タイと共通している。ハタ類のおいしさは国境を越えて折り紙付きであるようだ。プラー・ガウ料理は家庭料理ではないため、私は食べたことがない。いつかレストランに行ったら食べてみたいと楽しみにしている。

同じ日に別の場所で獲られた出荷サイズのドックマー(上)(2018/1/19 撮影)

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